本当は違う。
本当を探し回り。
現実を置き去りにして。
走り続けてきた。
本当の自分。
本当の夢。
本当の愛。
此処でない何処か。
いまでないいつか。
追い求めてきた。
 
子どもの頃。
父はよく殴った。
行き過ぎたしつけ。
優しいときは底抜けに甘く。
怒ると手が止まらない。
人格が2つあるようだった。
子どものわたしにはそう見えた。
 
お父さんが大好き。
殴るお父さんは間違ったお父さん。
ぶたれながら。
これは本当のお父さんじゃない。
そうやって現実から逃避した。
それが生き抜く手段だった。
 
逃げられない現実。
「癌」という現実。
目の前にして。
泣きながら。
もだえながら。
生まれて初めて。
たぶん初めて。
わたしは現実と向き合った。
向き合える自分を知った。
 
もう目をそむけない。
たとえ痛み苦しんでも。
現実を生きていたい。
この瞬間のわたしでいい。
この瞬間がベストなんだ。
本当探しの旅を終えて。
いまが輝き始めた。


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